INTERPRETING GUIDE B02
街録通訳をスムーズに進めるために
知っておいていただきたいこと
街録は、通訳者がその場でどんどん動く現場です。
良い街録を成立させるには、制作側と通訳者が役割と現場環境を事前に共有しておくことが大切です。
街録では、通訳担当者が率先して動きます
街録では、質問数が5つほどにまとまっていることも多く、現場に出たあとは、外国人観光客など取材対象になりそうな方を見つけたら、基本的には通訳担当者が率先して声をかけ、どんどん動きます。
そのため、街録通訳は「スタッフの横で待って、聞かれた言葉だけ訳す仕事」ではありません。誰に声をかけるか、どういうテンションで入るか、どの位置に立つか、相手が話しやすい空気をどう作るかまで含めて、制作側と一緒に現場を組み立てていきます。
街録は、制作側と通訳者の共同作業です。
通訳者が動きやすいよう、出演承諾、立ち位置、カメラ映り、反応の仕方、服装、休憩の取り方まで、現場前に簡単に共有しておくと進行がかなり安定します。
まず確認したいのは、出演承諾書があるかどうか
街録では、取材後に出演承諾書へサインをお願いすることがあります。外国語話者の場合は、その内容を相手が理解できるよう説明する役割も通訳者が担います。
そのため、街録へ出る前に、出演承諾書を準備しているか、誰が持っているか、どのタイミングで説明するかを確認しておくとスムーズです。
出演承諾書がある場合
取材後に、番組側の手順に沿って内容を説明します。相手が日本語を読めない場合は、何に同意するのかを通訳してからサインをお願いします。
出演承諾書がない場合
口頭でどこまで説明し、どのように承諾を確認するのか、制作側の運用を事前に確認します。現場で通訳者が独自に判断するものではありません。
通訳者の立ち位置は、取材前に一度確認します
街録では、インタビュアー、カメラ、取材対象者、通訳者の位置関係がとても重要です。通訳者が対象者から離れすぎると声を聞き取りにくくなり、近すぎるとカメラの画角に入りやすくなります。
対象者の声が聞こえる位置
街中は車や人の声など雑音が多いため、対象者の発言を確実に聞ける距離を取ります。
カメラの邪魔をしない位置
通訳者を画角に入れるのか、入れないのかで立ち位置が変わります。事前にディレクター・カメラマンと確認します。
インタビュアーと連携できる位置
追加質問や「次へ」の合図を受け取れるよう、インタビュアーやディレクターの動きも見える位置が理想です。
できれば前日までに、質問案を共有してください
街録の質問が5問程度でも、事前に内容が分かっているのと、当日その場で初めて聞くのとでは動きやすさが違います。
前日までに質問案をいただければ、通訳者は「どんな相手に、どんな順番で、どのくらいの深さで聞くのか」をイメージできます。言い回しを事前に考えたり、質問によっては補足が必要か確認したりできるため、当日の立ち上がりも速くなります。
当日は、街録開始前に5分程度の軽い打ち合わせがあると十分です
長い打ち合わせは必要ありません。現場の動き方と、その日の通訳の重さを確認します。
街録では、「どの程度通訳するか」も番組によって変わります
街録といっても、求めるものは企画によって違います。表情やリアクションをテンポよく集めたい街録と、考えをしっかり聞きたい街録では、通訳の入れ方も変わります。
リアクション・テンポを優先する場合
回答の意味を押さえつつ、必要以上に長く通訳を挟まず、短く返して次の質問へ進みます。相手の表情や勢いを切らないことを優先します。
難しい話・理由まで聞く場合
回答内容を丁寧に取り、必要なら区切って確認しながら通訳します。専門的な話や、理由・背景をしっかり聞きたい場合は、テンポより内容の正確さを優先します。
最初の声かけは、少しテンションを上げるくらいがちょうどよいことがあります
街角で突然声をかけられると、相手はどうしても身構えます。そこで通訳担当者は、相手が警戒しすぎないよう、普段より少し明るく、テンションを上げて声をかけることがあります。
ただし、必要以上に盛り上げたり、馴れ馴れしくしたりすることが目的ではありません。「この人なら少し話してもいいかな」と思ってもらえる空気を作ることが大切です。
街録では、通訳者がこの流れを自分から回していきます
基本的には、音声として相槌を入れません
対象者が話している最中に、通訳者が「うん」「そうですね」「なるほど」と音声で相槌を入れると、その声が収録音声に重なることがあります。
そのため、基本的には、表情・目・うなずきで反応し、相手が話しやすい空気を作ります。
カメラに映るか、服装はどうするかも事前確認が必要です
街録通訳では、通訳者が画面に映る場合もあれば、基本的にフレーム外にいる場合もあります。映る可能性があるなら服装への配慮が必要ですが、映らないのであれば動きやすさを優先できます。
カメラに映る可能性があるか
映る前提なら、派手な柄や大きなロゴを避けるなど、番組側の希望を確認します。
軽装でよいか
長時間歩く街録では、動きやすさも重要です。特に夏場は、必要以上に厚着をすると体力を消耗します。
街録では、労務・現場環境への配慮もとても大切です
街録は、屋外で長時間立ち続けたり、歩き回ったりする仕事になることがあります。通訳者が疲労し、集中力が落ちれば、聞き取りや判断にも影響します。
良い街録を成立させるためには、通訳の技術だけでなく、水分補給・休憩・暑さ対策・食事まで含めて現場を組み立てることが重要です。
夏場の熱中症対策
炎天下での長時間街録では、日陰や涼しい場所を確保し、無理に連続して立ち続けないようにします。
水分補給
対象者を探して動き続けていると、水分を取るタイミングを逃しがちです。短い時間でも定期的に補給します。
短くても定期的な休憩
5〜10分でも座る、日陰に入るなど、集中力を戻す時間を取ると、その後の通訳の質も保ちやすくなります。
涼しい場所でクールダウン
夏場は特に、コンビニ・カフェ・建物内など、涼しい場所に一度入る時間を意識します。
食事時間をまたぐ場合
昼食・夕食時間をまたいで長時間続く場合は、食事を取れる時間をどこで確保するかも確認します。
天候・気温の変化
暑さだけでなく、雨・寒さ・強風なども疲労につながります。屋外時間が長い場合は装備や休憩場所も考えます。
「通訳者だから立ちっぱなしでも大丈夫」ではありません
街録は、声をかけ、相手の発言を集中して聞き、ディレクターの意図を判断しながら次々と動く仕事です。体力を消耗した状態では、通訳の質にも影響します。制作側と通訳者の双方で、無理のない現場運営を意識することが大切です。
街録前に、ディレクターと確認しておきたいこと
長い打ち合わせは不要です。これだけ共有できればかなり違います。
- 出演承諾書の有無と取り方
- 狙いたい対象者
- 前日までに共有できる質問案
- 質問事項と質問数
- リアクション優先か、内容を丁寧に聞くか
- 通訳者がカメラに映るか
- 立ち位置の基本
- 相槌を音声で入れてよいか
- 服装・軽装の可否
- 休憩・食事の取り方