VIDEO TRANSLATION GUIDE A06

映像翻訳における
「英語」とは

英語は、イデアプラスの映像翻訳案件のおよそ半数を占める言語です。

同じ「英語」でも、話す人、分野、素材の状態によって、必要な知識や経験は大きく変わります。

イデアプラスの映像翻訳は、およそ半数が英語

イデアプラスが扱う映像翻訳では、英語の案件がおよそ半数を占めます。ただし、「英語の映像」といっても、その中身はさまざまです。アメリカのスポーツ実況、イギリスでの街頭インタビュー、英語を母語としない専門家への取材。同じ英語でも、話す人や分野によって、聞き取りに必要な知識や経験は大きく変わります。

英語案件が多いのは、英語圏の取材が多いことに加え、英語が母語ではない人への取材やインタビューでも、共通言語として英語が使われることがあるためです。

さらに、テレビ番組の制作過程で届くのは、スクリプトのない編集前の映像素材です。実際に素材を開き、声を聞き、映像を見て初めて分かることも少なくありません。

英語の映像素材を確認しながら翻訳する作業イメージ
スクリプトのない映像素材では、音声と映像の両方を確認しながら翻訳を進めます。

同じ英語でも、話す人によって違います

英語の違いというと、アメリカ英語とイギリス英語を思い浮かべる方も多いでしょう。実際の取材映像では、同じ国の中でも地域や話者によって発音や言い回しが異なり、英語を母語としない人の話も扱います。

アメリカ英語

語彙や発音、固有の言い回しに加え、地域や年代、話者ごとの話し方にも違いがあります。

イギリス英語

アメリカ英語とは語彙や発音が異なります。地域によるアクセントの違いが、聞き取りに影響することもあります。

非ネイティブの英語

母語の影響を受けた発音や語順、独特の言い回しが含まれることがあります。前後の会話も確認しながら意味を捉えます。

海外ロケや街録では、日本人ディレクターが英語で質問し、英語を母語としない相手が英語で答えることもあります。取材する側とされる側の双方にとって、英語が共通言語になっているケースです。

その場合、文法的に整っていない表現や、言い直し、言葉を探しながらの発話も含まれます。単語だけを追うと意味を取り違えることがあるため、何を尋ねられ、それに対して何を伝えようとしているのかを確認します。

ジャンルが変われば、必要な知識も変わります

英語案件には、報道、スポーツ、バラエティ、ドキュメンタリーなど、さまざまなジャンルがあります。日常会話を正確に聞き取れることと、競技の実況や専門家の説明を理解できることは、同じではありません。

スポーツ

競技用語、選手名、チーム事情、実況特有の言い回しやスピードなど、競技そのものへの理解が必要です。

報道・ニュース

政治・社会情勢、役職名、制度、出来事の背景などを確認しながら、発言の意味を捉えます。

バラエティ

スラング、冗談、皮肉、テンポの速い会話など、辞書だけでは捉えにくいニュアンスも扱います。

ドキュメンタリー

専門分野の知識に加え、長いインタビューの文脈や、話し手の考えの流れを追う力が求められます。

CASE|MLB実況翻訳

MLB実況で分かった、分野への理解の大切さ

MLBの実況映像を継続して担当していた、MLBに詳しい翻訳者がいました。ある案件でその担当者の都合がつかず、別の英語翻訳者にも対応できるか確認したことがあります。

しかし、実況のスピードに加え、野球特有の用語や言い回し、選手や試合についての知識が必要で、別の担当者では十分に対応することができませんでした。

この経験から分かるのは、分野への理解が、訳語の選び方だけでなく、聞き取りや意味の理解そのものを支えているということです。

翻訳者にも、それぞれ経験や得意分野があります。イデアプラスでは、素材の内容と翻訳者の得意分野に加え、納期やスケジュールを踏まえて担当を決めています。

生の映像素材は、まず聞き取るところから

映画やドラマの翻訳では、台本やスクリプトを参照しながら進められる場合があります。一方、イデアプラスがテレビ番組のために扱う海外取材、インタビュー、街録、会見などの映像素材には、スクリプトがないことがほとんどです。まず自分の耳で、何を話しているのかを聞き取るところから始まります。

届くのは、編集前の「生の素材」です。訛りがどの程度あるのか、複数の人の声が重なっていないか、周囲の音がどれくらい入っているか。どの程度の専門知識が必要なのかも、実際に素材を開いてみるまで分からないことがあります。

同じ英語のインタビューでも、静かな部屋で一人が話す素材と、屋外で何人もの声が重なる素材では、聞き取りの条件が違います。言語や映像の長さだけでは、翻訳の難しさを判断しきれません。

テレビ番組の英語映像翻訳では、聞き取りが翻訳の土台になります。 発音への慣れ、分野の知識、音声の状態などを合わせて、素材ごとの難しさを見極めます。

聞き取りを支えるのは、映像と背景の理解

音声だけでは判断しにくいとき、映像の中に手がかりがあることがあります。話者が指さしているもの、表情や身振り、周囲の状況、画面に映る人名や地名などです。

例えば、「これ」「あの人」といった言葉が何を指すのかは、音声だけでは分からなくても、映像を見ると確認できる場合があります。直前の質問や会話の流れも、発言の意味を判断する助けになります。

こうした確認は、非ネイティブの英語に限りません。話者の母語にかかわらず、映像と音声を合わせ、必要な用語や背景を調べながら、話し手の意図を捉えます。

映像素材と翻訳原稿を確認しながら作業するイメージ

聞き取りだけで判断せず、映像内の情報や背景も確認します。

01聞く音声から発言を聞き取る
02見る表情・身振り・周囲の状況を確認する
03調べる人名・用語・背景を確認する
04訳す発言の意味と意図を日本語で伝える

実際の作業では、聞く・見る・調べることを行き来しながら翻訳を進めます。それでも確認できない箇所は、推測で断定せず、不明点として伝えます。

映像翻訳における「英語」は、話す人も、分野も、収録の状況もさまざまです。 その幅広さに向き合い、聞き取りと映像確認、背景の理解を重ねて、話し手が伝えようとしていることを日本語にしていきます。

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