VIDEO TRANSLATION GUIDE A05

インタビュー・街録映像をどう翻訳するか
――話し方と文体

同じ発言でも、番組の用途によって日本語の見せ方は変わります。

事実を正確に伝えることと、話し手らしさを残すこと。そのバランスを考えます。

映像翻訳は、話した言葉をそのまま日本語に置き換えるだけではありません

インタビューや街録では、話し手が文法どおりの文章で話しているとは限りません。言い直し、言いよどみ、省略、繰り返し、くだけた表現。こうした話し言葉をすべて同じ形で日本語にすると、かえって内容が分かりにくくなることがあります。

一方で、整えすぎると話し手の温度感が消えたり、実際より強い・弱い印象になったりします。番組向けの映像翻訳では、「何を伝えるための翻訳か」を見ながら、日本語の文体や整え方を決めます。

インタビュー映像で話し手の発言を確認するイメージ

まず、番組で何に使う翻訳なのかを考えます

CONTENT CHECK

内容確認

まず「何を話しているのか」をスタッフが把握するための翻訳。意味の取りこぼしを避け、原発言との対応を重視します。

NEWS / INFORMATION

報道・情報番組

話し手のキャラクターよりも、発言内容や事実関係が視聴者に誤解なく伝わることを優先する場面が多くなります。

VARIETY / FEATURE

バラエティ・人物紹介

意味の正確さを守りながら、驚き、喜び、くだけた感じなど、話し手の温度感もある程度残した方が伝わることがあります。

報道では、まず「その人がどんな人か」より、「何を話したか」を正確に伝える。

もちろん話し方のニュアンスも大切ですが、ニュースや情報番組では、翻訳によって話し手の人物像を強く作るより、発言の事実・意図・条件を正確に伝えることを優先します。

「です・ます調」と「だ・である調」で、受ける印象は変わります

同じ意味の発言でも、日本語の語尾を変えるだけで印象は変わります。どちらが正解ということではなく、番組の文体、話者の立場、使用場面に合わせて選びます。

敬体|です・ます調

やわらかく、説明的に聞こえやすい

原意:駅ができてから、この地域を訪れる人が増え、街の雰囲気も大きく変わった。

「駅ができてから、ここを訪れる人が増えました。街の雰囲気も大きく変わったと思います。」

インタビュー回答として自然で、丁寧な印象。

常体|だ・である調

簡潔で、発言をそのまま提示しやすい

原意:駅ができてから、この地域を訪れる人が増え、街の雰囲気も大きく変わった。

「駅ができてから、ここを訪れる人が増えた。街の雰囲気も大きく変わったと思う。」

字幕・テロップの方針や番組全体の文体によってはこちらが合う場合もあります。

番組側で「です・ますで統一」「常体で」など指定がある場合は、その方針に合わせます。指定がない場合は、素材内容やこれまでの番組の使い方を見ながら整えます。

話し手らしさは残す。でも、日本語側でキャラクターを作りすぎない

01

感情の強さを勝手に足さない

原文が穏やかな発言なのに、日本語で断定を強めたり、感情的な語尾を加えたりすると、視聴者が受ける印象が変わってしまいます。

02

年齢・性別から話し方を決めつけない

若い女性だから「〜だわ」、若者だから「〜じゃん」のように、日本語側のステレオタイプで話者像を作らないようにします。

03

くだけた感じは、意味を壊さず、世代を限定しない日本語で

笑いながら話す、驚いている、友人同士で話しているなど、映像から明らかな温度感は、日本語でもしっかり出した方がよいことがあります。

ただし、くだけさを出すために、ある特定の世代だけに自然な若者言葉や流行語へ寄せすぎると、視聴者によっては意味が取りにくくなったり、話し手の印象を必要以上に変えてしまったりします。

番組向けの翻訳では、すべての世代が無理なく受け取れる範囲で、自然な口語感を出すことを大切にします。くだけた雰囲気は残しつつ、時代や世代に強く依存する言い回しは慎重に選びます。

04

言いよどみは、映像として使う価値があるかで判断する

「えー」「その」「つまり」などを一語ずつ再現すると読みにくくなる場合があります。一方で、話し手が考え込む間や表情まで含めて使いたい映像では、その言いよどみ自体に意味があります。

たとえば「つまり……駅ができてから、ここを訪れる人が増えました」と9秒ほど話している場合、原稿上で次のように分けることがあります。

00:00 つまり……

00:03 駅ができてから、ここを訪れる人が増えました。

こうしておけば、「考え込む表情ごと使うなら『つまり……』も残せる」「テロップを短くしたいなら後半だけ使える」と、ディレクターが編集上の判断をしやすくなります。映像翻訳では、単にフィラーを削るのではなく、使い方の選択肢が分かる原稿にすることも大切です。

「自然な日本語」にすることと、「別の人の言葉」にすることは違います

読みやすく整えるほど、翻訳者の日本語表現が前に出やすくなります。特にインタビューでは、整えながらも、話し手が実際に言っていない断定・評価・感情を付け加えないことが重要です。

同じ発言でも、番組の使い方によってこう変わることがあります

原意:「最初は正直、うまくいくとは思っていなかった。でも地域の人たちが助けてくれて、続けることができた。」

報道・情報寄り

「当初は、うまくいくとは思っていませんでした。しかし、地域の人たちの支えがあり、続けることができました。」

発言内容と因果関係を明確にし、人物像を過度に演出しない。

人物紹介・バラエティ寄り

「最初は正直、うまくいくと思っていなかったんです。でも地域のみんなが助けてくれて、ここまで続けられました。」

意味は変えず、本人が振り返って話している温度感を少し残す。

どちらも「正しい翻訳」になり得ます。違うのは、番組でどう見せたいかです。映像翻訳では、原意を守ったうえで、用途に合う日本語を選びます。

街録は、短い発言ほど前後の映像が重要です

街録では、「そうですね」「あれはちょっと…」「絶対こっち」など、その一言だけでは何を指しているのか分からない発言がよくあります。質問内容、直前の発言、指さしている対象、周囲の状況を見て初めて意味が確定することがあります。

そのため、街録素材は発言部分だけを細かく切り出しすぎるより、質問や前後のやり取りが少し残っている方が、正確に判断しやすくなります。

質問
何について答えているのかを決める重要な情報です。
前後の発言
代名詞や省略された主語、「それ」「あれ」が何を指すのか判断する材料になります。
映像上の状況
指さし、表情、対象物など、音声だけでは分からない意味を補います。
インタビュー映像と翻訳原稿を見比べながら文体を整える作業イメージ

文体より先に、正確に確認したいことがあります

読みやすい日本語に整えることは大切ですが、人物名、地名、数字、日時、商品名、専門用語などは、文体よりも優先して正確に確認する必要があります。特に報道・情報系の素材では、語尾が自然でも事実関係が違えば意味がありません。

分かる範囲で共有いただけると助かる情報

  • 番組ジャンルやコーナーの性格
  • 内容確認用か、テロップ候補として使うか
  • です・ます調/常体などの指定
  • 出演者・専門家の氏名や肩書
  • 専門用語・固有名詞の参考資料
  • 特に正確に確認したい発言や数字

素材到着前でも、納期からご相談ください。

英語の映像、韓国取材分、現地取材分、前日会見、試合後選手インタビュー、短いコメント確認など、取材映像の翻訳可否、スケジュール、料金など、お気軽にお問い合わせください。小さなご相談でも大丈夫です。

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